SES事業拡大プロジェクト ── 社内提案資料
Document 03 / 07

事業設計書(戦略・施策)

作成日:2026年5月28日 担当:田中 颯大 ステータス:初版

本書の目的と位置づけ

現状分析書(Doc.01)で明らかにした課題と、要件定義書(Doc.02)で定義したゴール像を踏まえ、 月次1,000万円達成までの戦略・施策・フェーズ設計・収益シミュレーションを本書で明確にする。

本書で答える3つの問い: ① 「卵と鶏問題」に対してどう答えるか(案件先か、リソース先か) ② 売上を増やすために何をするか(需要獲得・供給確保の両輪) ③ どのフェーズで何に投資し、どう回収するか

1. 基本戦略の方向性

Pillar 01
需要先行型の営業転換
待ちから攻めへ。上流パートナー開拓を能動的に行い、案件を自ら作る
  • 既存2社の深耕で安定基盤を作る
  • 月20社へのアウトバウンドを習慣化
  • 10社以上のパートナーネットワーク構築
Pillar 02
需要連動型のリソース調達
案件が決まったらリソースを確保する。先に抱えず、でも即応できる仕組みを作る
  • スタンバイ候補を常時3名以上確保
  • 4調達チャネルの使い分けルール確立
  • 平均提案リードタイム3営業日以内
Pillar 03
収益の安定化・分散化
特定パートナーへの依存を下げ、月次売上のブレを最小化する
  • 1社依存度30%以内を維持
  • 案件終了の2ヶ月前から次案件の仕込み
  • 3ヶ月先の稼働予定を常時可視化

2. 業界の構造問題への回答:「卵と鶏」問題

❌ 採用しない:供給(リソース)先行型
  • 先にエンジニアを採用・確保してから案件を探す
  • 案件が来なければ即固定費赤字になる
  • 採用コスト・給与が先行投資として重くのしかかる
  • SESの知名度がない時期に優秀な人材を採れない
  • → リスクが高く、失敗時のダメージが大きい
✅ 採用する:需要(案件)先行型
  • 案件(需要)を先に確保し、その後リソースを調達する
  • 案件が確定してからリソースを動かすため固定費リスクなし
  • まず「協力会社・人材紹介」でリードタイムの短い調達を活用
  • 実績が積まれてから採用を強化し、マージンを改善する
  • → SES業界のベストプラクティスと一致
結論:需要先行型を採用する。「案件が決まってから3営業日以内にリソースを提案できる体制」を整えることが最優先。
ただし注意点:完全な需要先行は理想だが、「スタンバイ候補(案件が来たら即提案できる人材リスト)」は常時3名以上を維持しておく。 スタンバイ候補は採用・雇用ではなく、「声がけ済みの協力会社・人材紹介登録者」として確保することでコストを抑える。

2.5 競合分析と自社の差別化

新規上流パートナーに「なぜ自社を選ぶのか」を即答できることは、営業活動の根幹となる。 以下に主要な競合ポジションと自社の差別化軸を整理する。

自社(Homula)
AI/ML特化型SES
  • ブレインパッド・FastLabel案件の納品実績
  • AI/データ領域のエンジニア理解が深い
  • スタンバイ制で3営業日以内の提案が可能
  • 少数精鋭で担当者が直接対応(窓口が一本化)
  • 需要先行×固定費ゼロで単価に柔軟性あり
競合①
大手SESエージェント・人材会社
  • 案件数・人材プールは豊富
  • ただし技術領域の専門理解は薄い
  • 担当者が多く、窓口が不明瞭になりやすい
  • エンジニア品質のばらつきが大きい
  • 単価帯が高め・マージン開示が不透明
競合②
同規模の中小SES会社
  • 価格競争力はあるが、実績が乏しい
  • AIスタートアップ系への納品実績がない場合が多い
  • リソースプールが薄く、急な需要に対応できない
  • 営業力が弱く、受動型のみの会社も多い
  • 品質管理フローが属人的になりやすい

自社が選ばれる根拠(差別化ポイント)

①実績の信頼性:ブレインパッドおよびFastLabelという、AI/データ領域で実績のある上流企業との取引継続実績が、新規パートナーへの「技術領域への適合性」を証明する材料になる。
②対応スピード:スタンバイ候補制を採用し、案件打診から3営業日以内での提案を標準化する。大手が1週間〜2週間かかる部分で差別化できる。
③窓口の一本化:少数精鋭体制により、営業・提案・稼働後フォローを担当者一人が一貫して担う。上流パートナーが「誰に連絡すれば解決するか」が常に明確。
差別化の弱点(正直に認識すること):現時点ではエンジニアの稼働実績人数・技術スタック実績が数値化されていない。 新規営業では「ブレインパッド・FastLabel案件で〇名・〇件の実績」を具体的に示せるよう、実績資料を事前に整備しておくことが前提条件となる。

3. 需要獲得戦略(上流開拓)

3-1. 既存パートナーの深耕(短期優先)

パートナーアクション期限期待効果
ブレインパッド ①今週中にアポ打診、②「次回案件のニーズヒアリング」を実施、③定期連絡の仕組みを設ける(月1回) 今週〜来月 追加案件1〜2件の獲得。既存売上消失のリスク軽減
FastLabel ①同様に案件継続・新規ニーズをヒアリング、②担当者との関係強化、③リファラル紹介のお願い 今週〜来月 追加案件または新規パートナー紹介の獲得

3-2. 新規上流パートナーの開拓(中期施策)

ターゲット業種・企業規模アプローチ方法優先度期待難易度
AIスタートアップ(データ活用・ML系) Wantedly・X(Twitter)・IT勉強会でのコネクション構築 最高 中(ブレインパッド/FastLabel系の隣接領域)
DXコンサルファーム(アクセンチュア系SES等) LinkedInでの接触・既存パートナーからの紹介 高(競合も多い。信頼構築に時間がかかる)
中堅SIer・受託開発会社 テレアポ・メール営業・Wantedly 中(リソース需要が恒常的に存在する)
IT系エージェント・SES専門エージェント エージェント経由の案件紹介登録 低(登録のみで案件が流れてくる。ただしマージンが低め)
事業会社のCTO・IT部門 紹介経由が中心・直接営業は難易度高 最高(実績なしでは接点を作れない)

3-3. 営業活動の設計

施策内容目標KPI
週次アウトバウンドメール・LinkedIn・Wantedly経由の新規接触週5社以上(月20社)
月次打合せ設定商談化した先と打合せ・ニーズヒアリング月4件以上
既存パートナー定期接触月1回の情報交換・案件相談月2社以上との定期連絡
紹介プログラム既存パートナーに「他社を紹介してもらう」依頼を常態化四半期1件の紹介獲得

4. 供給確保戦略(リソース調達)

調達パターンフェーズ別優先度用途・発動条件マージン目安
① 既存プロパー 全フェーズで最優先 最も利益率が高い。案件との適合性が高い場合は必ず優先 最高(追加コストなし)
② 協力会社(WORK HERO / ScaleAgent) Phase 1〜2で主力 プロパーで補えない場合の第一選択。リードタイム短く即応性が高い 中(30〜40%程度)
③ 人材紹介( レバテック・ ココナラテック) Phase 2から本格稼働 3週間以上の準備期間がある案件に活用。単価交渉の余地あり 中(実態マージン30〜45%。エンジニア希望単価により変動)
④ 新規採用(業務委託・契約社員) Phase 3から本格稼働 継続性の高い案件が確保されてから採用。リードタイム1〜3ヶ月 最高(中間費用なし)
リソース調達の原則(需要先行): 案件の内定を受けてからリソース調達を開始する。ただし「スタンバイ候補リスト」(声がけ済みの人材3名以上)を常時整備しておき、案件決定から3営業日以内に提案できる体制を維持する。

スタンバイ候補の確保方法

チャネル方法確保目標数
WORK HERO定期的に「空きリソース確認」の連絡を入れ、提案可能な人材を常に把握1〜2名
ScaleAgent月1回の情報交換で稼働可能状況を確認1名
レバテック・ Freelance条件を仮エントリーしておき、案件確定後に本格選考1〜2名(候補登録状態)
社内プロパーベンチ状態のメンバーを案件投入の最優先候補として管理随時確認

5. フェーズ設計

Phase 1
基盤固め期 ── 売上消失リスクを回避し、営業の仕組みを立ち上げる
2026年6月〜8月(3ヶ月) 目標月次売上:500万円

需要(案件)施策

  • 既存2社への追加案件打診(今週中)
  • 新規ターゲット10社リスト作成
  • 週5社のアウトバウンド開始
  • 月2件の商談設定を目標とする

供給(リソース)施策

  • WORK HERO・ScaleAgentとの供給余力確認
  • スタンバイ候補3名を確保
  • プロパーメンバーの稼働状況の可視化
  • 人材紹介チャネルの契約確認

体制・仕組み施策

  • 案件管理スプレッドシートの作成
  • 営業活動ログの記録開始
  • 月次KPIレビューの導入(毎月末)
  • 事業部長への月次報告フォーマット整備
Phase 2
拡大期 ── 新規パートナー開拓を加速し、稼働数を増やす
2026年9月〜11月(3ヶ月) 目標月次売上:750万円

需要(案件)施策

  • 新規上流パートナー5社との取引開始
  • 月15社以上へのアウトバウンド
  • 月4件以上の商談設定
  • 案件パイプライン常時7件以上管理

供給(リソース)施策

  • 人材紹介チャネルの本格活用開始
  • スタンバイ候補5名以上に拡大
  • 調達リードタイムを3営業日以内に標準化
  • 業務委託採用の初期試行(1〜2名)

体制・仕組み施策

  • 案件管理ツールの強化(Notionなど)
  • 営業トークスクリプトの整備
  • 稼働率・売上のリアルタイムダッシュボード化
  • フェーズ2終了時の戦略レビューを実施
Phase 3
安定期 ── 月次1,000万円を3ヶ月連続で達成し、次の成長へ
2026年12月〜2027年3月(4ヶ月) 目標月次売上:1,000万円

需要(案件)施策

  • 上流パートナー10社以上と継続取引
  • 月20社以上アウトバウンド・成約率50%
  • 案件パイプライン常時10件以上
  • 上位5社とのアライアンス関係構築

供給(リソース)施策

  • 稼働5〜6名・稼働率90%以上
  • 業務委託採用の本格拡大
  • スタンバイ候補7名以上
  • リソース調達の完全仕組み化

体制・仕組み施策

  • 3ヶ月連続1,000万円で次フェーズへ
  • 次目標(月次1,500万円)の設計開始
  • 営業専任者の採用検討
  • SES事業の組織体制を正式化

6. 収益シミュレーション(3シナリオ)

単一の楽観シナリオのみでは意思決定の材料として不十分なため、以下の3シナリオを設定する。 各シナリオでの着地見込みと必要な対処を事前に合意しておく。

Worst ── 要注意
6月売上ゼロ → 7月から回復
既存2社案件が来月終了し、追加案件の獲得が7月以降にずれ込む最悪ケース。固定費・キャッシュランウェイが試される。
〜5,800万円
10ヶ月累計(3月末1,000万円到達は1〜2ヶ月の遅れ)
Base ── 計画値
既存案件継続 + 段階的開拓
既存2社から追加案件を獲得しつつ、月次アプローチで新規パートナーを段階的に積み上げる現行計画。
〜8,470万円
10ヶ月累計(12月に1,000万円初達成)
Best ── 加速
追加案件即受注 + 開拓加速
既存2社から複数案件を即受注し、新規パートナー開拓も前倒しで進む最良ケース。
〜9,800万円
10ヶ月累計(11月に1,000万円初達成)
Worstケースへの備え(キャッシュランウェイの確認): 6月売上がゼロになった場合でも事業を継続するために、現在の手元資金・固定費を確認し「何ヶ月間無収入でも耐えられるか」を明示しておく。 Worstケースでも○ヶ月の運転資金があることを事業部長に示すことが承認の前提条件となる。 ※現在の固定費合計・手元残高を本資料の付属資料として添付すること。

Baseシナリオ 月次詳細(計画値)

フェーズ稼働数(見込み)想定単価月次売上累計売上
2026年6月Phase 12〜3名170万円340〜510万円〜510万円
2026年7月Phase 13名170万円510万円〜1,020万円
2026年8月Phase 13〜4名170万円510〜680万円〜1,700万円
2026年9月Phase 24名175万円700万円〜2,400万円
2026年10月Phase 24〜5名175万円700〜875万円〜3,275万円
2026年11月Phase 25名175万円875万円〜4,150万円
2026年12月Phase 35〜6名180万円900〜1,080万円〜5,230万円
2027年1月Phase 36名180万円1,080万円〜6,310万円
2027年2月Phase 36名180万円1,080万円〜7,390万円
2027年3月Phase 36名180万円1,080万円〜8,470万円

月次売上推移イメージ(Baseシナリオ / 目標ライン:1,000万円)

6月
425万
425万
7月
510万
510万
8月
595万
595万
9月
700万
700万
10月
787万
787万
11月
875万
875万
12月
990万
990万
1月
1,080万
1,080万
2月
1,080万
1,080万
3月
1,080万
1,080万
前提条件(Baseシナリオ):各フェーズの施策が計画通りに実行されること。稼働率は90%を仮定。Phase 2以降で新規パートナーからの案件が月1〜2件獲得できていることが前提。前提が崩れた場合は速やかにWorstシナリオの対処に切り替える。

7. リスクと対策

リスク:高
来月の案件終了による売上ゼロ
ブレインパッド・FastLabel案件が終了すると月次売上がほぼゼロになるリスク。最も緊急度が高い。
対策:今週中に既存2社へ追加案件打診のアポを入れる。並行してPhase 1の新規開拓を即時開始する。
リスク:高
営業活動が習慣化されずに形骸化する
「週5社アウトバウンド」などの活動量目標が他業務に流されて実行されないリスク。
対策:週次の営業活動ログを記録し、月末KPIレビューで必ず確認する。事業部長報告の中にも組み込む。
リスク:中
リソース調達が間に合わず案件を逃す
案件が決まってからリソースを探し始めると、提案まで時間がかかり他社に取られるリスク。
対策:スタンバイ候補を常時3名以上確保。WORK HERO・ScaleAgentとの月次供給余力確認を習慣化。
リスク:中
新規パートナー開拓が予定より遅れる
Phase 2で5社の新規パートナー獲得を想定しているが、営業サイクルが長く遅れるリスク。
対策:Phase 2でのパートナー数が3社以下の場合、エージェント経由の案件紹介チャネルを緊急追加する。
リスク:中
人材の品質ミスマッチによるクレーム
人材紹介・新規採用で調達した人材が上流パートナーの期待に沿わず、信頼を損なうリスク。
対策:提案前の技術スキル確認フローを標準化。初回案件は必ず信頼性の高いWORK HERO経由で対応。
リスク:低
固定費増大による採算悪化
採用・人材紹介費が売上増加より先に増えると損益が悪化するリスク。
対策:需要先行原則を守り、固定費は月次売上の50%以内に維持。新規採用はPhase 3まで原則行わない。
リスク:高
偽装請負・労働者派遣法違反のリスク
SES(準委任契約)でありながら上流パートナーが指揮命令を行う場合、「偽装請負」に該当し行政処分・取引停止リスクが生じる。新規パートナーが増えるほどリスクが上昇する。
対策:新規パートナーとの契約締結時に「準委任契約である旨・指揮命令の禁止・業務指示の経路」を明記した契約書を用意する。契約書の法務チェックはカール(アシスタント)が実施し、田中が最終確認を行う体制を構築する。

8. 概算投資計画

投資項目Phase 1Phase 2Phase 3備考
営業ツール(CRM・管理ツール)0〜3万円/月0〜3万円/月0〜5万円/月Notion / スプレッドシートで代替可
人材紹介費(紹介手数料)0万円30〜50万円/件30〜50万円/件採用時のみ発生。月1件想定
採用費(業務委託・契約社員)0万円0〜10万円/月10〜20万円/月Offers/Green等の掲載費
営業活動費(交通費・接待等)3〜5万円/月5〜10万円/月5〜10万円/月月次打合せ・イベント参加費含む
合計(月次)3〜8万円/月35〜63万円/月45〜85万円/月売上比では3〜8%程度の投資
投資対効果:Phase 3で月次1,000万円を達成した場合、投資額は月次売上の約5〜8%(50〜80万円)であり、十分な費用対効果が見込まれる。