本書の目的
SESビジネスにおいて「案件があるのにリソースが出せない」は機会損失であり、 「リソースを抱えたのに案件がない」は固定費の垂れ流しになる。 本書は、この二律背反を解決するための4調達パターンの使い分けルール・発動フロー・コスト構造を定義する。
本書の核心:調達は「案件が決まってから動く」が原則。ただし「スタンバイ候補」を常時確保しておくことで、案件決定から3営業日以内の提案を実現する。
1. 4調達パターン詳細比較
①
既存プロパー(社員・フルタイム)
最優先。利益率最大。即応性最高。
対象
社内社員・フルタイム業務委託
リードタイム
即日〜3営業日
マージン率目安
70〜80%以上
スケーラビリティ
低(人数が固定)
品質安定性
最高(直接管理可)
リスク
ベンチ時は固定費が発生
発動条件
案件が来たら常に最初に確認
②
協力会社(WORK HERO / ScaleAgent)
Phase 1〜2の主力。即応性が高い。
対象
WORK HERO・ScaleAgent経由のエンジニア
リードタイム
1〜5営業日
マージン率目安
15〜30%(実態値)
スケーラビリティ
中(供給人数に上限あり)
品質安定性
高(既存取引実績あり)
リスク
低(必要時のみ発動)
発動条件
プロパーで対応不可の場合
③
人材紹介(レバテック・ ココナラテック等)
Phase 2から本格活用。単価交渉余地あり。
対象
フリーランスエンジニア(業務委託)
リードタイム
1〜3週間
マージン率目安
30〜45%(エンジニア希望単価次第)
スケーラビリティ
高(市場が大きい)
品質安定性
中(スキルシート精査が必要)
リスク
スキルミスマッチのリスクあり
発動条件
案件確定まで2週間以上の余裕がある場合
④
新規採用(Offers・Green等)
Phase 3から本格活用。最高マージン。
対象
業務委託契約・契約社員
リードタイム
1〜3ヶ月
マージン率目安
60〜80%
スケーラビリティ
中(採用工数が必要)
品質安定性
中〜高(採用基準による)
リスク
採用コスト・時間がかかる
発動条件
継続3ヶ月以上の案件が確定してから
2. マージン構造と収益シミュレーション
① プロパー
〜80%
単価180万の場合
利益 〜144万円/月
利益 〜144万円/月
④ 新規採用
65%
単価180万の場合
利益 〜117万円/月
利益 〜117万円/月
③ 人材紹介
30〜45%
単価180万・エンジニア単価100万の場合
利益 〜80万円/月
利益 〜80万円/月
② 協力会社
15〜30%
単価180万・協力会社支払い140万の場合
利益 〜40万円/月
利益 〜40万円/月
| 調達パターン | 稼働人数(Phase 3目標) | 想定単価 | マージン率 | 月次利益貢献 |
|---|---|---|---|---|
| ① プロパー(30%) | 1〜2名 | 180万円 | 80% | 〜288万円 |
| ② 協力会社(30%) | 1〜2名 | 170万円 | 15〜30% | 〜25〜50万円 |
| ③ 人材紹介(25%) | 1〜2名 | 180万円 | 30〜45% | 〜54〜81万円 |
| ④ 新規採用(15%) | 1名 | 180万円 | 65% | 〜117万円 |
| 合計 | 5〜6名 | 平均174万円 | 平均40〜55% | 〜570〜680万円/月 |
重要:プロパー比率を高めるほど利益率は向上するが、スケーラビリティが下がる。
Phase 1〜2は協力会社・人材紹介を中心に素早くスケールし、Phase 3以降はプロパー・新規採用比率を高めて利益率を改善する方針。
協力会社マージンは上流請求単価とエンジニア支払い単価の差であるため、実際の取引単価が確定した段階で再計算すること。
3. リソース調達の発動フロー
案件受注から稼働開始までのフロー
1
案件の打診・内定を受ける
上流パートナーから「〇〇のスキルを持つエンジニアが必要」という打診が来る
この時点ではまだリソース調達を開始しない。スタンバイリストを確認するだけ。
2
スタンバイ候補リストを確認(当日中)
事前に確保しているスタンバイ候補(3名以上)の中から、スキル・稼働時期が合う人材を確認
マッチする候補がいれば → ステップ4へ。いなければ → ステップ3へ
3
緊急調達の実施(1〜3営業日)
スタンバイ候補がいない場合、調達チャネルを優先順に当たる
プロパーに空きあり?
→ 最優先で投入。スキルシートを当日中に提出。
→ 最優先で投入。スキルシートを当日中に提出。
なければ WORK HERO / ScaleAgent
→ 即日連絡。2〜3営業日で候補提示を依頼。
→ 即日連絡。2〜3営業日で候補提示を依頼。
それでも不足なら人材紹介
→ レバテック等に案件票を送付。候補提示まで5〜10営業日。
→ レバテック等に案件票を送付。候補提示まで5〜10営業日。
継続3ヶ月以上の確定案件のみ
→ 新規採用(業務委託)を開始。1〜3ヶ月後の稼働を見据える。
→ 新規採用(業務委託)を開始。1〜3ヶ月後の稼働を見据える。
4
スキルシート提出・面談設定(1〜2営業日)
候補の経歴書・スキルシートを上流パートナーへ提出。面談が必要な場合は日程調整。
スキルシートのフォーマットは事前に統一しておく。提出まで24時間以内を目標。
5
契約締結・稼働開始
上流パートナーの承認後、契約書を取り交わし稼働開始。案件管理シートに登録。
稼働開始から2週間以内に「不具合なし」の確認を上流パートナーに取ること。
4. スタンバイ候補の管理(常時確保3名以上)
スタンバイ候補の確保方法と管理ルール
確保目標数
常時3名以上
確認頻度
月1回の状況確認
提案リードタイム目標
3営業日以内
| チャネル | スタンバイ確保方法 | 確認タイミング | 目標確保数 |
|---|---|---|---|
| プロパー社員 | 現在のプロジェクト終了予定と稼働スケジュールを月次で把握 | 毎月末に確認・更新 | 0〜2名(プロジェクト状況による) |
| WORK HERO | 「来月以降で稼働可能なエンジニアはいますか?」を月1回確認 | 月初に担当者へ連絡 | 1〜2名をスタンバイリストに登録 |
| ScaleAgent | 月1回の定例情報交換で稼働可能状況を確認 | 月1回の定例連絡 | 1名 |
| レバテック・ フリーランス | スキル・単価条件を仮エントリー状態にしておき、案件時に本格選考 | プロフィール更新時に確認 | 候補登録状態で1〜2名 |
スタンバイ候補リストの管理項目
| 管理項目 | 内容 | 更新頻度 |
|---|---|---|
| 氏名・所属 | エンジニアの名前と所属(協力会社・フリーランス等) | 初回登録時 |
| 主要スキル・経験年数 | 言語・フレームワーク・業務ドメイン | 初回 + 変更時 |
| 希望単価 | 月額単価の希望レンジ | 月1回確認 |
| 稼働可能時期 | 最短でいつから稼働できるか | 月1回確認 |
| 稼働形態 | フルリモート / 一部出社 / 常駐等の制約 | 初回 + 変更時 |
| 最終確認日 | いつ状況確認したか | 確認のたびに更新 |
| 優先度スコア | スキル適合度・実績・単価等の総合評価 | 更新時 |
5. フェーズ別 リソース調達方針
| フェーズ | 稼働目標 | 主力調達パターン | 理由 |
|---|---|---|---|
| Phase 1 (〜3ヶ月) |
3名 | ① プロパー最優先 ② 協力会社(WORK HERO) |
リソース調達の仕組みが未整備なため、即応性の高いチャネルに絞る。人材紹介は準備のみ。 |
| Phase 2 (〜6ヶ月) |
5名 | ① プロパー ② 協力会社 ③ 人材紹介(本格稼働) |
スタンバイ候補5名確保。人材紹介チャネルのリードタイムを踏まえ、案件確定3週間前から調達開始。 |
| Phase 3 (〜12ヶ月) |
6名 | ① プロパー ② 協力会社 ③ 人材紹介 ④ 新規採用(本格開始) |
継続案件が確定してから業務委託採用を開始。プロパー比率を高めて利益率を改善。 |
6. 品質管理フロー
上流パートナーからのクレームゼロが最重要:SESビジネスは「人」の品質が全て。一度クレームが発生すると上流パートナーとの関係が終わる可能性がある。品質確認のフローを必ず守ること。
| タイミング | 確認項目 | 対応者 |
|---|---|---|
| 提案前 | スキルシートの正確性確認・案件要件とのマッチング確認 | 田中(提案担当) |
| 稼働開始1週間後 | 上流パートナーへの「業務フィット感」確認の連絡 | 田中(フォロー担当) |
| 稼働開始1ヶ月後 | パフォーマンス評価ヒアリング・不満点の早期吸い上げ | 田中 |
| 毎月末 | 稼働中全員の「継続意向・課題」確認(エンジニア側にも) | 田中 |
| 案件終了1ヶ月前 | 「次の案件」打診を上流パートナーへ。継続or終了の確認 | 田中(営業担当) |